全量売電は、太陽光発電で生み出した電気をすべて電力会社に売却して収益を得る仕組みです。
FIT制度による20年間の固定価格買取が魅力ですが、買取価格の下落やFIP制度への移行など、制度環境は大きく変化しています。
この記事では、全量売電の仕組みや余剰売電との違いから、2025〜2026年度の最新買取価格、メリット・デメリット、自家消費型との比較、卒FIT後の対応策まで、事業判断に必要な情報をまとめて解説します。
これから全量売電を検討する方も、すでに運用中の方も、最新の制度動向を踏まえた賢い選択のヒントが見つかるはずです。
全量売電と余剰売電の違いをわかりやすく解説

(1)全量売電の基本的な仕組み
太陽光発電の売電方式は大きく「全量売電」と「余剰売電」に分かれます。
全量売電とは、太陽光パネルで発電した電気のすべてを電力会社に売却する方式です。
発電設備と建物の電気系統が分離されているため、発電した電力は一切自家消費に使われず、送電網を通じてすべて電力会社へ送られます。
- 発電した電力の100%を電力会社に売却する
- 建物で使う電気は通常どおり電力会社から別途購入する
- 売電用の配線と自家消費用の配線が完全に分かれている
全量売電にはFIT制度またはFIP制度の認定が必要で、認定年度の買取価格が適用されます。
FIT制度であれば20年間にわたって固定価格での買取が保証されるため、長期にわたる収入の見通しが立てやすい点が大きな特徴です。
(2)余剰売電の基本的な仕組み
余剰売電は、太陽光パネルで発電した電気をまず自宅や事業所で使い、消費しきれなかった余りだけを電力会社に売る方式です。
住宅用の太陽光発電で広く採用されており、日中に発電した電力で照明やエアコンをまかない、使い切れなかった分を売電する流れになります。
- 発電した電力をまず自家消費に充て、電気代を削減する
- 余った分だけを電力会社に売却して収入を得る
- 夜間や雨天時は電力会社から電気を購入する
余剰売電では電気代の削減効果と売電収入の両方が見込めます。
10kW未満の住宅用太陽光はFIT制度で10年間の固定買取が保証され、10kW以上50kW未満の産業用設備では20年間の買取期間が適用されます。
ただし産業用の場合、自家消費率30%以上という地域活用要件を満たす必要があります。
(3)全量売電と余剰売電の違いを比較表で整理
全量売電と余剰売電は、売電する電力量だけでなく、対象設備の規模や買取期間、利用者の特性にも明確な違いがあります。
資源エネルギー庁の資料では、各方式の要件が設備容量ごとに定められています。
| 比較項目 | 全量売電 | 余剰売電 |
|---|---|---|
| 売電する電力 | 発電した電力のすべて | 自家消費後の余剰分のみ |
| 対象設備容量 | 50kW以上 | 10kW未満(住宅用)・10kW以上50kW未満 |
| FIT買取期間 | 20年間 | 10年間(10kW未満)・20年間(10kW以上50kW未満) |
| 自家消費 | できない(電気は別途購入) | できる(電気代削減効果あり) |
| 主な利用者 | 事業者・投資家 | 住宅オーナー・中小事業者 |
| 設置場所 | 遊休地・大型の屋根 | 住宅屋根・小中規模の事業所 |
設備規模が50kW以上であれば全量売電を選べますが、50kW未満では余剰売電が基本です。
投資目的で収入の最大化を目指すなら全量売電、電気代の削減も併せて行いたい場合は余剰売電がそれぞれ適しています。
(4)全量売電・余剰売電・自家消費の使い分け
太陽光発電の活用方法には、全量売電と余剰売電に加えて、発電した電力をすべて自社で使い切る「自家消費型」という選択肢もあります。
電気料金が上昇を続ける中、近年は自家消費型を導入する事業者が増加傾向にあります。
| 方式 | 向いているケース | 主な経済効果 |
|---|---|---|
| 全量売電 | 遊休地があり、自社の電力消費が少ない | 売電収入の最大化 |
| 余剰売電 | 日中にある程度の電力を消費する住宅・事業所 | 電気代削減+売電収入の両取り |
| 自家消費型 | 電力消費量が大きい工場・商業施設 | 電気代の大幅な圧縮 |
使い分けの判断基準は「自社でどれだけ電気を消費しているか」です。
電力消費が大きい施設では、売電価格よりも電気料金の方が高い状況が定着しているため、自家消費にまわした方が経済的に有利になります。
反対に、電力をほとんど使わない遊休地に太陽光パネルを設置するケースでは、全量売電で売電収入を最大化するのが合理的です。
(5)2020年度に50kW未満の全量売電は廃止
かつては10kW以上の設備であれば全量売電を選べましたが、2020年度の制度改正で状況は大きく変わりました。
10kW以上50kW未満の設備には「地域活用要件」が導入され、自家消費率30%以上が義務付けられたのです。
- 2019年度まで:10kW以上なら全量売電が選択可能
- 2020年度以降:10kW以上50kW未満は余剰売電のみ(自家消費率30%以上が条件)
- 50kW以上:引き続き全量売電を選択可能
この制度変更は、太陽光発電の普及が進む中で、発電した電力を地域で有効活用するという国の方針を反映したものです。
ただし例外があり、ソーラーシェアリングとして農地の一時転用許可を10年以上受けている場合は、50kW未満でも全量売電が認められています。
現在、新規に全量売電を始めるには、原則として50kW以上の設備規模が必要になると押さえておきましょう。
全量売電の最新FIT・FIP買取価格【2025〜2026年度】

(1)FIT買取価格の推移と現在の水準
全量売電の収益性を左右するのがFIT制度の買取価格です。
制度開始の2012年度には10kW以上の太陽光発電で40円/kWhという高水準でしたが、太陽光パネルのコスト低減に伴い毎年引き下げが続いてきました。
| 年度 | 50kW以上250kW未満 | 10kW以上50kW未満 |
|---|---|---|
| 2012年度 | 40円/kWh | 40円/kWh |
| 2015年度 | 29円/kWh(7月以降27円) | 29円/kWh(7月以降27円) |
| 2018年度 | 18円/kWh | 18円/kWh |
| 2020年度 | 13円/kWh | 13円/kWh(余剰売電のみ) |
| 2022年度 | 10円/kWh | 11円/kWh |
| 2024年度 | 9.2円/kWh | 10円/kWh |
| 2025年度上半期 | 8.9円/kWh | 10円/kWh |
| 2025年度下半期 | 8.9円/kWh | 10円/kWh |
| 2026年度 | 9.6円/kWh | 9.9円/kWh |
2012年度の40円/kWhから2026年度の時点では9.6円/kWhへと、約14年間で買取価格は約4分の1にまで下がっています。
早期にFIT認定を受けた事業者ほど高い買取価格が適用されているため、参入時期によって将来の期待できる収益に大きな差が生じるのが実情であると理解しておきましょう。
(2)2025年度の設備容量別の買取価格一覧
2025年度のFIT・FIP買取価格は、設備容量と設置方法によって細かく分かれています。
特に注目すべきは、2025年度下半期から導入された「初期投資支援スキーム」です。屋根設置型に対し、最初の数年間だけ高い買取価格が適用される2段階制が採用されました。
| 区分 | 設置方式 | 買取価格 | 買取期間 |
|---|---|---|---|
| 10kW未満(住宅用) | 屋根設置 | 最初の4年間24円→残り6年間8.3円/kWh | 10年間 |
| 10kW以上50kW未満 | 地上設置 | 10円/kWh(2025年度下半期) | 20年間 |
| 10kW以上 | 屋根設置 | 最初の5年間19円→残り15年間8.3円/kWh | 20年間 |
| 50kW以上250kW未満 | 地上設置 | 8.9円/kWh(2025年度下半期) | 20年間 |
| 250kW以上 | 地上設置 | FIP入札制(上限約9円/kWh) | 20年間 |
全量売電が可能な50kW以上250kW未満の地上設置は8.9円/kWhです。
屋根設置型の初期投資支援スキーム(事業用19円/kWh)と比べると大きな差があるため、屋根に設置できる環境がある事業者は初期投資支援スキームの活用を検討する価値があるでしょう。
(3)2026年度以降の制度変更と注意点
2026年度以降、全量売電に関わる制度は大きく変わることが確定しました。
影響が大きいのは、10kW以上の地上設置型太陽光が2027年度以降、FITおよびFIP両制度の支援対象外となる点です。
- 2026年度まで:地上設置型は設備の規模を問わず支援対象
- 2027年度以降:地上設置型のすべてがFIT/FIP両制度の支援対象外
- 屋根設置型:引き続き初期投資支援スキーム(2段階価格)が適用
この変更の背景には、太陽光パネルのコスト低減が十分に進み、地上設置型は国の支援に頼らず自立できるという判断があります。
一方で屋根設置型は、建物の構造上の制約や初期投資の壁が依然として高いため、引き続き政策的な支援が維持されます。
全量売電を検討している事業者にとっては、国の支援がなくなり市場価格の変動リスクを受け入れる必要が出てくるため、事業計画の見直しが不可欠です。
(4)FIP制度の仕組みと全量売電への影響
FIP制度とは「フィードインプレミアム」の略称で、発電した電力を市場で売却し、その市場価格に「プレミアム」と呼ばれる補助金を上乗せして受け取る仕組みです。
FIT制度のように売電価格が完全に固定されるのではなく、電力の市場価格に連動する点が特徴です。
| 項目 | FIT制度 | FIP制度 |
|---|---|---|
| 売電先 | 電力会社(固定価格買取) | 卸電力市場で売却 |
| 価格の決まり方 | 認定年度の固定価格 | 市場価格+プレミアム |
| プレミアム計算 | なし | 基準価格−参照価格(市場平均) |
| 収入の安定性 | 非常に高い | 市場変動の影響を受ける |
| 対象規模 | 50kW以上250kW未満(2025年度) | 250kW以上(2025年度)、50kW以上(2026年度〜) |
FIP制度のプレミアムは「基準価格から参照価格を差し引いた額」として算出されます。
基準価格は発電コストをもとに国が設定し、参照価格は電力市場の加重平均価格です。
市場価格が低いときにはプレミアムが増え、高いときにはプレミアムが減るため、一定の収入水準は確保されますが、FIT制度ほどの安定性はありません。
全量売電を検討する事業者は、FIP制度への理解を深めた上で、市場リスクへの対応策を事前に検討しておくことが求められます。
全量売電を選ぶメリット

(1)20年間の安定した売電収入が得られる
全量売電の最大の魅力は、FIT制度によって20年間にわたり固定価格で電力を買い取ってもらえる点です。
天候による発電量の変動はあるものの、年間の発電量は地域や設備容量からおおむね予測可能で、毎年の売電収入を安定的に見積もることができます。
- FIT認定を受ければ、20年間は同じ買取価格が適用される
- 発電量は天候で多少変動するが、年間ベースではほぼ一定の範囲に収まる
- 不動産投資のように空室リスクがなく、太陽が出れば確実に発電する
この安定性は、株式や不動産といった他の投資手段と比較しても際立っています。
景気変動の影響を直接受けにくいため、長期にわたって一定の収入を確保したい事業者や投資家に選ばれてきました。
(2)事業計画や融資の審査に通りやすい
全量売電は20年間の売電収入があらかじめ見通せるため、金融機関からの融資が受けやすいという利点があります。
銀行やリース会社は融資審査の際に「返済原資が確保されているか」を重視しますが、FIT制度による固定買取は返済計画の裏付けとして高く評価されます。
| 審査で評価されるポイント | 全量売電の強み |
|---|---|
| 返済原資の確実性 | 20年間の固定価格買取が保証 |
| 収入予測の精度 | 日射量データから年間発電量を高精度で試算可能 |
| 担保価値 | 太陽光発電設備自体が担保として認められるケースがある |
| 事業の継続性 | 国の制度に基づく長期契約で安定 |
金融機関の中には太陽光発電向けの専用ローン商品を用意しているところもあり、一般的な事業融資よりも有利な条件で借入ができる場合があります。
事業計画書に20年間の収支シミュレーションを添えることで、融資審査をスムーズに進められるのは全量売電ならではの強みです。
(3)遊休地や未活用の屋根を収益化できる
全量売電は、使い道のない土地や活用されていない建物の屋根を収益源に変えられる点も大きなメリットです。
農地転用が難しい土地、建物を建てるには不便な立地、倉庫の広い屋根など、通常では収益を生みにくい資産を有効活用できます。
- 駐車場にもできないような不整形地でもパネル設置が可能な場合がある
- 工場や倉庫の屋根は日当たりが良く、パネルの設置面積を確保しやすい
- 固定資産税を払うだけだった遊休地が売電収入を生む資産に変わる
土地の有効活用という観点では、太陽光発電はメンテナンスの手間が比較的少なく、居住者の募集やテナント管理といった不動産経営のような労力がかからないのも魅力です。
年に数回の点検と除草作業程度で維持できるため、本業が忙しい事業者にとっても管理しやすい投資先といえます。
全量売電のデメリットと注意点
(1)発電した電気を自家消費できない
全量売電では、太陽光パネルで発電した電力はすべて電力会社に売却されます。
建物で使う電気は別途、電力会社から購入する必要があるため、電気代の削減効果は得られません。
- 発電した電力は送電網を通じてすべて電力会社に送られる
- 事業所や施設の電気代は一切減らない
- 売電収入と電気代の「差額」が実質的な利益になる
近年は電気料金が上昇傾向にあるため、高い電気代を払いながら安い単価で売電するという構図が生まれやすくなっています。
電力消費が多い施設を持つ事業者にとっては、全量売電より自家消費型の方が経済的に有利になるケースが増えてきました。
(2)FIT買取価格は年々下落している
FIT制度の買取価格は制度開始以来、一貫して下がり続けています。
資源エネルギー庁の資料によると、全量売電が可能な50kW以上250kW未満の区分では、2012年度の40円/kWhから2026年度の時点では9.6円/kWhまで低下しました。
| 年度 | 買取価格(50kW以上250kW未満) | 2012年度比 |
|---|---|---|
| 2012年度 | 40円/kWh | 100% |
| 2016年度 | 24円/kWh | 60% |
| 2020年度 | 13円/kWh | 33% |
| 2025年度 | 8.9円/kWh | 22% |
| 2026年度の時点 | 9.6円/kWh | 24% |
この価格水準で収益を確保するには、設備の導入コストを十分に抑える必要があります。
初期のFIT認定者が40円/kWhで売電しているのに対し、今から参入する事業者は約4分の1の単価水準で事業を回すことになるため、収益構造は根本的に異なると認識しておくべきです。
(3)初期投資額が大きく回収までに時間がかかる
全量売電に必要な50kW以上の太陽光発電設備を導入するには、一般的に数千万円規模の初期投資が必要です。
パネルやパワーコンディショナーの購入費用に加えて、架台の設置工事、電気工事、系統連系の費用なども発生します。
- 50kW規模:おおむね1,000万〜2,000万円程度
- 100kW規模:おおむね2,000万〜3,500万円程度
さらに、土地の造成や防草対策の費用も別途かかる場合があります。
買取価格が9.6円/kWhまで下がった現在、投資回収期間は10〜15年程度が目安とされています。
20年間のFIT期間中に投資を回収し、残りの期間で利益を得るという収支計画が一般的ですが、設備の劣化やメンテナンス費用も考慮する必要があるため、収支シミュレーションは慎重に行うことが大切です。
(4)FIT期間終了後の収益見通しが不透明
FIT制度の買取期間は20年間で、その後は固定価格での買取保証がなくなります。
いわゆる「卒FIT」の状態になると、売電価格は大幅に下がるのが一般的です。住宅用(10kW未満)の卒FIT後の買取価格は、大手電力会社で7〜9円/kWh程度にとどまっているのが現状です。
- 20年間のFIT期間中は固定価格で安定収入
- 卒FIT後は電力会社との個別契約で買取価格が決まる
- 産業用の卒FITはまだ事例が少なく、相場が形成されていない
産業用太陽光のFIT制度が始まったのが2012年度であるため、最初の卒FIT事例が発生するのは2032年度以降です。
20年後の電力市場がどうなっているかを正確に予測するのは難しく、この不透明さは全量売電の大きなリスク要因です。
太陽光パネルの寿命は一般的に25〜30年程度とされているため、卒FIT後も発電は継続できますが、収入が大きく減少する可能性は念頭に置いて計画を立てる必要があります。
全量売電と自家消費型はどちらが得か

(1)売電価格と電気料金の逆転が起きている
全量売電と自家消費型のどちらが経済的に有利かを判断する上で、最も重要なのは「売電価格」と「電気料金」の比較です。
FIT制度の開始当初は売電価格が電気料金を大幅に上回っていましたが、現在は完全に逆転しています。
| 項目 | 金額(目安) |
|---|---|
| 全量売電の買取価格(50kW以上、2026年度の時点) | 9.6円/kWh |
| 事業用電力の購入単価(高圧の目安) | 15〜25円/kWh |
| 家庭用電力の購入単価(従量電灯の目安) | 26〜35円/kWh |
たとえば電気料金が20円/kWhの事業所であれば、9.6円/kWhで売電するより自家消費した方が1kWhあたり約10円の差額分だけ経済的に有利です。
このように売電価格と電気料金の差が拡大するほど、自家消費型の方がトータルの経済効果は大きくなります。
(2)設備規模や電力使用量で最適解は変わる
ただし、すべてのケースで自家消費型が優れているわけではありません。
全量売電と自家消費型のどちらが適しているかは、設備規模や電力の使用パターンによって異なります。
- 電力消費が多い工場や商業施設 → 自家消費型が有利(電気代削減効果が大きい)
- 電力をほとんど使わない遊休地 → 全量売電が合理的(自家消費する先がない)
- 日中に電力消費がある事業所 → 余剰売電で電気代削減と売電収入の両立が可能
全量売電を選ぶべき典型的なケースは、自社に大きな電力需要がない場合です。
遊休地や使っていない農地に太陽光パネルを設置する場合、そもそも近くに電力を消費する施設がなければ、自家消費型にする意味がありません。
反対に、発電量に対して電力消費量が十分に大きい施設であれば、自家消費型を選ぶ方が経済的なメリットは大きくなります。
(3)蓄電池を組み合わせた自家消費の経済効果
自家消費型の経済効果をさらに高める手段として注目されているのが、蓄電池との組み合わせです。
太陽光発電は日中しか発電できませんが、蓄電池を導入すれば昼間に余った電力を蓄えておき、夜間や早朝の電力消費に充てることができます。
| 組み合わせ | 自家消費率の目安 | メリット |
|---|---|---|
| 太陽光のみ | 約30〜40% | 日中の電気代を削減 |
| 太陽光+蓄電池 | 約60〜80% | 夜間も太陽光電力を活用し電気代を大幅削減 |
蓄電池の導入にはまとまった費用がかかりますが、電気料金の上昇が続く中で、自家消費率を高めることによる長期的な経済効果は無視できません。
一方、全量売電はこうした蓄電池の恩恵を受けにくく、売電単価の低下に対する打ち手が限られるという構造的な課題があります。
将来の電気料金動向も見据えた上で、全量売電と自家消費型のどちらが自社にとって最適か、総合的に判断することが大切です。
全量売電の卒FIT後に備える対応策

(1)卒FIT後の売電先を確保する方法
FIT制度の20年間が満了すると、固定価格での買取は終了します。
しかし発電設備が稼働している限り、売電を継続すること自体は可能です。卒FIT後の売電先としては、既存の電力会社との契約更新か、新電力への切り替えが主な選択肢になります。
- 大手電力会社:卒FIT後も売電を受け付けているが、買取価格は7〜9円/kWh程度と低め
- 新電力会社:大手よりやや高い買取価格を提示するケースがある
- アグリゲーター:複数の発電事業者の電力をまとめて取引し、より有利な条件を引き出す仲介事業者
住宅用太陽光の卒FIT(10年間のFIT期間終了)では、すでに新電力各社が独自の買取プランを提供しています。
産業用太陽光の卒FIT(20年間)はまだ事例が少ない段階ですが、同様に複数の売電先を比較検討できるようになると見込まれています。
FIT期間の満了が近づいたら、早めに情報収集を始めておくのが賢明です。
(2)自家消費への切り替えという選択肢
卒FIT後に売電価格が大幅に下がる場合は、全量売電から自家消費型への切り替えも有力な選択肢です。
20年経過後も太陽光パネルの発電能力は当初の80%程度を維持しているのが一般的で、引き続き発電した電力を活用できます。
| 対応策 | 概要 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 売電の継続 | 卒FIT後に新たな売電先と契約 | 自家消費する施設がない遊休地の場合 |
| 自家消費への転換 | 配線を変更し、発電電力を自社施設で使用 | 近隣に電力消費の大きい事業所がある場合 |
| 蓄電池の導入 | 昼間の発電電力を蓄えて夜間に活用 | 電力消費が夜間に集中する場合 |
| 設備の更新 | 古い設備を最新機器に交換し発電効率を向上 | 発電効率の回復で収益性を改善したい場合 |
配線の切り替え工事には一定の費用がかかりますが、卒FIT後の売電価格が電気料金を大きく下回る状況であれば、自家消費に切り替えた方が経済的に有利になるケースがほとんどです。
特に近くに自社の事業所や工場がある場合は、自家消費への転換を積極的に検討する価値があります。
(3)全量売電で失敗しないためのチェックポイント
全量売電を始める前、あるいは運用中に確認しておきたいポイントを整理します。事前の確認を怠ると、想定していた収益が得られないリスクがあります。
- 日射量データの確認:NEDOが公開している地域別の日射量データで年間発電量を試算する
- 系統連系の空き容量:電力会社の送電網に空きがないと設備を設置しても売電できない
- 設備のメンテナンス計画:パネルの汚れや機器の故障は発電量の低下に直結する
- 保険の加入:自然災害や機器故障による損害に備える
- 税務上の取り扱い:全量売電の所得は事業所得または雑所得に分類される
全量売電の収支シミュレーションでは、設備の経年劣化による発電量の低下も考慮に入れる必要があります。
一般的に太陽光パネルの出力は年間0.5%程度ずつ低下するとされており、20年後には初期の約90%にまで下がる計算です。
メンテナンス費用や保険料等のランニングコストを含め、長期的な収支計画を立てることが事業成功の基本です。
なお、売電収入は課税対象となるため、税務上の正しい取扱いにもあわせて注意を払う必要があります。
まとめ
全量売電は、50kW以上の太陽光発電設備でFIT制度を活用し、発電した電力のすべてを売却する投資型の仕組みです。
20年間の固定価格買取による安定収入が強みですが、買取価格は2012年度の40円/kWhから2026年度には9.6円/kWhまで下がっており、自家消費型との経済性比較は避けて通れません。
2027年度以降は地上設置型の支援対象外化が確定したため、独自の自由な市場取引も視野に入れる必要があります。
遊休地の活用を検討している方は全量売電のメリットを活かしつつ、電力消費の大きい施設をお持ちの方は自家消費型との使い分けを含めて、長期的な視点で最適な方式を選びましょう。
